テレビ業界に衝撃が走ったのは、2025年3月のこと。奇抜な行動と圧倒的な存在感で知られた演出家「ナスD」こと友寄隆英氏が、テレビ朝日から正式に降格処分を受けたというニュースが報じられました。
彼は長年、数々の人気番組を手がけ、制作者としてもタレントとしても高い注目を集めていました。しかし今回の処分には、単なる人事異動とは異なる深刻な背景があった――。
内部調査によって明らかになったのは、不適切な経費処理、そして職場でのパワーハラスメントとされる行為です。
そこで、こちらではテレビ朝日が抱える信頼の危機、そして彼が築いてきたキャリアの終着点について、多角的に掘り下げてみました。
長年の功績に陰りを落とした処分
友寄氏は「ナスD」という愛称で知られ、そのユニークな演出と自らが体当たりで挑むロケ企画で話題をさらってきた人物だ。番組に出演しながら自ら構成や演出にも関わる異色の存在で、SNS上でも熱狂的なファンが多い存在でした。
だが、その輝かしい表舞台の裏で、問題が積もり積もっていたようですね。
テレビ朝日は、彼の行為が社内規定に違反していることを認定し、役職を解かれたことを正式に発表。特に不正経費の処理と職場におけるハラスメント行為が重く見られたとされています。
経費の私的流用、その内容と問題点
テレビ朝日の内部監査によって明るみに出たのは、2019年から2025年の間に、総額500万円を超える経費が不適切に使用されていたという事実でした。
報告によれば、問題となった項目には以下のような事例が含まれていました
- プライベートな飲食費を番組経費として処理
- 業務とは無関係な会合の費用を制作費として申請
- 社内ルールを無視しての高額経費請求
これらの行為は、組織の財務的健全性を損なうばかりか、社内の規律をも揺るがすものでした。
友寄氏は不正とされた金額をすでに全額返還しているが、そのこと自体が問題の重大性を裏付けています。テレビ朝日は社内の経費処理プロセスの再構築に着手しているそうです。
現場を疲弊させた「言動」と「圧力」
もう一つの問題は、ナスDの言動による職場環境の悪化だった。
関係者の証言によれば、スタッフに対する口調はしばしば威圧的で、意見を言いにくい空気があったといいます。
- 「お前には無理だ」「考えるな、やれ」など、人格を否定する発言
- 過密なスケジュールの強要、無理なロケの推進
- スタッフの意見を即座に否定し、萎縮を招くマネジメント
こうした環境に耐えかねて、制作現場から離脱するスタッフも出て精神的に追い込まれるメンバーが続出した結果、外部からも危機感が高まり、ついには制作会社側からテレビ朝日に「対応を求める声」が届くに至ったとのことです。
この告発が転機となり、局側は本格的な調査と対処に踏み切りました。
彼が去った後の現場と番組への余波
ナスDが主導していた『ナスD大冒険TV』は、降格発表と同時に終了が決定。番組の公式SNSアカウントや関連サイトも閉鎖されたのです。
一連の問題によって、番組そのものの継続が困難と判断されたためだろう。出演者やファンの落胆も大きく、SNSには惜しむ声が相次ぎました。
また、彼の降格にとどまらず、経費不正への組織的な責任を問われたことで、番組関連の幹部3名が減給処分を受けています。これはテレビ朝日としても異例の対応であり、事態の深刻さを示していると言えるでしょう。
テレビ朝日が進める「信頼回復」への取り組み
再発を防ぐために、テレビ朝日は以下の対応策を表明しています。
- 経費処理システムの精査と監査体制の再強化
- ハラスメント対策研修の義務化
- 社員向けのコンプライアンス教育を年数回実施
こうした改革の背景には、テレビ局としての社会的責任を果たす意識があるでしょう。とはいえ、視聴者や業界内の信頼を再構築するには、相当な時間と誠意が求められるのでしょう。
番組制作に求められる“人”の資質とは
ナスDのケースは、コンテンツのヒットだけではなく、現場での振る舞いと組織との調和がいかに大切かを浮き彫りにしました。
才能のある人物でも、一定のルールや倫理を無視すれば、組織にとってリスクとなりうる。
創造性を生かすには自由も必要ですが、そこには信頼関係とルールの上に成り立つ土台が不可欠です。
まとめ:クリエイティブの裏に求められる責任感
今回の問題は、テレビ業界が抱える旧来の体質に警鐘を鳴らす象徴的な出来事とも言えます。
- 経費の私的流用による財務的な逸脱
- ハラスメントにより疲弊した現場
- 番組終了と関係者の処分
- 信頼回復に向けたテレビ朝日の新たな取り組み
これらを総合的に見ると、いかに一人のカリスマ的存在の行動が、組織全体に広範な影響を及ぼしうるかがわかります。
今後、友寄氏がどのような道を選ぶのか、またテレビ朝日がどうブランド価値を再構築していくのか。その動向は、テレビ業界における「人物評価」と「組織運営」のあり方を問い直す契機となるのでしょう。
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